お仕事役立ち情報:社会保険の適用拡大について(その2)
前回に引き続いて、平成28年10月1日からの社会保険の加入対象拡大について、特定社会保険
労務士の山口先生から、お話が寄せられたので紹介するよ。
「社会保険の適用拡大について(その2)」
社会保険の加入対象が拡大されたことで、これまで扶養の範囲内で働いていた人から受ける
質問で最も多いのが、「新しい制度では、いくら以内で働くのが得ですか?」「いくら以上働
くと損しますか?」というものです。
これは非常に難しい質問です。明確な答えは各個人・家庭の状況によって一概には言えませ
んが、自分で社会保険に加入することで何が起こるのかを考えてみましょう。
まず、社会保険に加入する主なメリットとデメリットは次のとおりです。
<メリット>
① 将来もらえる年金が増える
・社会保険に加入していない人は、将来、国民年金しかもらえませんが、社会保険に加入す
ることで、国民年金に加え、加入期間に応じた厚生年金が生涯もらえます。
② 給付が手厚くなる
・けがや病気で仕事ができなくなった場合に、傷病手当金が出ます。給料の約3分の2が、
最大で1年6か月もらえます。この他に、出産時(産前・産後休業中)には出産手当金
(給料の約3分の2)がもらえます。また、万が一障害を負った場合には、障害等級に
応じた障害厚生年金がもらえます。
③ 支払う保険料は全額所得控除
・毎月支払う社会保険料については、全額所得から控除されるので、所得税や住民税は少し
減る場合が多いです。
<デメリット>
① 社会保険料が徴収されて、手取り額が減る
・多くの人が社会保険の加入を躊躇する理由はここでしょう。給料の金額にもよりますが、
給料のおおむね15%程度が社会保険料として給料から差し引かれます。
・例えば、給料が88,000円の場合、厚生年金の保険料は毎月8,000円(※)、健康保険の
保険料は毎月4,460円(40歳以上は介護保険にも加入するので5,161円)(※)徴収さ
れます。年間の保険料は、約15万円(40歳以上は、約15万8千円)になります。パート
で年収106万円前後で働いている人は、120万円以上働かないと、毎月の手取りは減る
ことになります。(※平成29年1月現在)
② 配偶者に支給されている「配偶者手当」が支給停止になることがある
・配偶者に扶養されている場合、配偶者の勤務先から「配偶者手当」、「家族手当」が出て
いることがあります。この手当は、扶養家族に一定以上の収入がある場合は、支給停止に
なるはずです。まずは、配偶者の給与明細を確認し、この手当が支給されているかを確認
しましょう。支給されている場合は、扶養家族の収入の上限を確認してみましょう。
このように見ていくと、何が得で何が損かは、各家庭の状況により変わってきます。また、
短期的には損のように見えても、長期的には得をする場合もあります。何より、損得の感じ方
は個人の価値観によっても大きく異なります。現在の毎月の収入と、将来の年金・給付を比較
することはとても難しいですね。
また、現在は501人以上の会社に勤めている人が対象ですが、いずれ対象は拡大することが
予想されています。制度は今後も変わるのです。社会保険の制度自体を自分で決めることはで
きませんが、働き方は自分で決められます。「得か損か?」という視点ではなく「自分はどう
働きたいのか?」という視点で働き方を決めることも大切です。
≪特定社会保険労務士 山口民枝≫
- 私は世の中にどのようなお仕事があるか研究している、なぅ先生です。
これから、お仕事について一緒に勉強していきましょう!!